【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
閑話3 ギルバートの葛藤(ギルバート視点)
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「旦那様。本当に、何もされないのですか?」
「……そうだな。現状何かをするつもりはないし、手を出すつもりもない」

 シェリル嬢が休む客間を出ると、すぐにサイラスが俺に声をかけてくる。その声には明らかな怒りが含まれており、サイラスなりに怒っているのだろう。……サイラスは、シェリル嬢のことを好いている。もちろん、その感情は親愛の類であり恋慕ではない。俺の感情はどちらかと言えば恋慕に近い……のだと思う。まぁ、それは置いておくとして。

「……私は、アシュフィールド侯爵家の人間が許せません。……シェリル様のことを苦しめておいて、今ものうのうと生きているなんて……!」
「サイラス、口は慎め。そもそも、シェリル嬢が報復を望んでいないのだから、俺たちが行動するのは筋違いだろう」
「それは、そうですが」

 サイラスの心配も、分かるには分かる。大方、アシュフィールド侯爵家の人間がシェリル嬢のことを傷つけに来たらどうしようと思っているのだろう。それに関しては、俺もいろいろと思うことがある。……手っ取り早く縁を切るには、やはり手切れ金を渡すに限る。リスター家の懐は潤っているし、アシュフィールド侯爵家を満足させる金は出せる。だが、その場合アシュフィールド侯爵夫妻は満足しても、シェリル嬢の義妹は満足しないだろう。……あの女は、今まで度々社交界で見たことがあったが、シェリル嬢のことをいつも見下していた。それはつまり……シェリル嬢が不幸になっていないと分かると、攻撃してくる可能性があるということ。

「あぁ、そう言えば旦那様。一つお耳に入れておいた方が良いことが。シェリル様の元婚約者の方のお噂なのですが……」
「……イライジャ・マッケランか」
「はい。噂では、シェリル様との婚約を解消した後、その義妹と婚約したのですが……その、あまり上手く行っていないということです」

 ……そのサイラスの言葉に、俺の眉間にしわが寄る。……イライジャ・マッケランの噂もよく聞いていたし、俺も社交界で見ている。奴は、自分の父は王弟だと威張り散らしていた印象しかない。まさに、虎の威を借る狐状態だったな。……ちなみに、奴は当時婚約者であるシェリル嬢に強い劣等感を抱いていたとか何とか。
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