【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「主催はリオス伯爵家でございます。あのお家は代々懇意にしていただいておりまして、遠縁の親戚にもあたりますよ」
「……そ、そう」

 リスター家の遠縁の親戚ということは、悪い人はいない……と思いたい。そして、それを聞いてもイマイチ参加する決心がつかない。もしも、遠慮のない視線に晒されたらどうしようとか、そう言う考えばかりが思い浮かぶ。……今までならば、そんなこと大して気にもしなかったのに。今は、人にどう見られるかを気にしてしまう。……いいや、これは違う。ギルバート様にどう思われるかばかりを、気にしているのだろうな。

(ギルバート様だって、悪い噂のある女性とは一緒に居たくないだろうし……)

 そんな可能性が思い浮かべば、余計に決心がつかなくなる。そんな私を見てか、サイラスさんは「パーティー自体は十日後ですので、まだしばらく考える時間はありますよ」と言ってくれた。……十日後。ということは、長くても三日以内には答えを出さなくてはならない。準備だってあるだろうし、一週間前にはいろいろと決める方が楽なはず。

「……わた、しは」

 声が震える。いつの間にか社交の場に行くことに対しての嫌悪感よりも、ギルバート様のお隣にほかの女性が並ぶということへの嫌悪感の方が強くて。恋は人を強くすると誰かが言ったけれど、実際は弱くしていると思う。私は、弱くなっているから。

「おい、サイラス。いるか?」

 それから数分後。いきなりお部屋の扉が開き、ギルバート様が入ってこられる。それに驚いて私が目をぱちぱちと瞬かせれば、ギルバート様はそんな私を見て「……どうかしたのか?」と問いかけてこられた。その際に、ギルバート様の目は不安そうに揺れていて。……あぁ、このお方は何処までも不器用でお優しい人なのだなと思ってしまう。
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