【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
第33話 ちょっとだけ、照れる
(お、重い……! でも、それよりも……!)

 なんというか、密着してしまったのが気になる。私には恥じらいの気持ちなど全くないと思っていた。しかし、どうやら少しはあったらしい。……いや、ギルバート様に好意を抱き始めてから、家出していた気持ちが戻ってきたのかもしれない。……バカみたい。

「おい、サイラス! お前、何をして……!」

 ギルバート様は起き上がりながら、サイラスさんに文句を言う。でも、それからすぐに私に気が付いてくださったのか、「わ、悪い」とだけおっしゃって、私の上からすぐに移動された。……重たかったし、人に見られたら勘違いされそうな体勢だったけれど……その、ちょっと密着出来て嬉しかったかも……なんて。

「……旦那様。そこは、怒るよりも先にシェリル様を心配するところでしょう。そんなことですから、元婚約者に浮気されたのですよ」

 そんなギルバート様を見つめながら、サイラスさんは「はぁ」と露骨にため息をついたのちそう言う。その言葉にハッとされたのか、ギルバート様は私の両肩を掴み「怪我は、ないか?」と私のことを心配してくださった。……ギルバート様は、どこか不器用だ。だから、私を無視していたわけではない。それは分かっている。だから、怒る気力も湧かなくて。

「大丈夫です。怪我は、ありません」

 少しギルバート様から視線を逸らして、私はそう言う。。そもそも、なんというか密着した感触がまだ鮮明に分かるから、ギルバート様のことをまっすぐに見つめることが出来ない。顔も何処か赤くなっているような気がするし、照れてしまって動けない。私のそんなおかしな様子を見られたからか、ギルバート様は「何処か、痛いのか?」なんてしつこく訊いてこられる。……違う。痛くない。
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