【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「……シェリル嬢」

 そんな私を見てか、ギルバート様が私の肩をつかむ手に力を籠められる。その後、その手を私の手首に移動し、私の手首をしっかりとつかまれた。……一体、どうなさったの? そういう意味を込めてギルバート様を見つめれば、ギルバート様は苦しそうな表情をしていらっしゃった。

「ギルバート様?」

 だから、そんなギルバート様が気になってしまった。私は無意識のうちに捕まれていない方の手をギルバート様に伸ばしてしまう。けど、私の手がギルバート様の頬に触れそうだった時。ギルバート様は顔をそむけてしまわれた。

「……いや、何でも、ない。ちょっと、だけ……」
「何でしょうか?」
「……少しだけ、嫉妬をした。ジェセニアとは隠し事をするのか、と思ってな。……本当に、年甲斐もないな」

 そうおっしゃたギルバート様は「はぁ」と露骨にため息をつかれる。その様子が、やはりどこか可愛らしい。そう思いながら、私は「隠し事のつもりでは……」ということしか出来なかった。私は隠し事をしたかったわけじゃない。それがギルバート様を傷つけたりしたのならば……私は、謝らなくちゃいけない。

「わかっている。ただ、ジェセニアの目に腹が立っただけだ。……悪かったな」

 そのお言葉とほぼ同時に、私の手首が解放される。ギルバート様に掴まれていた手首が熱い気がするのは、きっと気のせいではないだろうな。そう思いながら、私はその手首をさする。……体温は、平常。
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