【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「それに……俺、ほかにも嫉妬した」

 私がそんな風に手首をさすっていると、ギルバート様は突然そんなカミングアウトをされた。……嫉妬? そんなことをしている素振りは、なかったような―ー。

(もしかして、ジェセニア様が現れる前に少し不機嫌だったのは……そういうこと?)

 そして、私はそんなことを思ってしまった。ジェセニア様が現れる前、ギルバート様は少し不機嫌だった。それはもしかして……嫉妬してくれていたのかも、なんて。

「俺、シェリル嬢がほかの輩の視線に晒されて、嫌だと思った。……本当に心が狭いな。シェリル嬢のことを『綺麗だ』やら『美しい』と言われたら、喜ぶべきことなのに……。俺は、そう思えなかった」
「そ、それは……」

 まさか、よそのお方が私のことを見てそんな風に話していたなんて、夢にも思わなかった。……けど、やっぱり嫉妬してもらえるのは素直にうれしい……かもしれない。それだけ、私のことを好いてくださっているということだもの。

「わ、私も……その、ギルバート様のことを褒められたら……その、微妙な気持ちになってしまう、かも、しれません……」

 しどろもどろな言葉だった。それぐらい、その言葉は照れくさくて。私は視線を逸らしながらそういうことしか出来なくて。そんな私の言葉に、ギルバート様は「……そうか」とおっしゃるだけだった。そんな言葉を聞いて、私はギルバート様の衣装の端をつまんだ。……これが、今の私にできる精いっぱいの好意を伝える方法だったから。

(会場の空気も気にならないし、声も聞こえないわね。それぐらい私……ギルバート様に夢中なのか、も)

 会場内の喧騒など全く気にならない。ただ、目の前にいらっしゃるギルバート様のことしか、見えなかった。きっと、この時にはすでに私はギルバート様に惚れていた。それこそ、幸せだと実感できるほどには、惚れこんでいた。
< 123 / 157 >

この作品をシェア

pagetop