【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
第39話 もう、負けない
 そして、パーティーも終盤に差し掛かったころ。私がギルバート様と「そろそろお暇しようか」と話していた時だった。

「あらぁ~、偶然ねぇ。お義姉様?」

 そんな声が、私の耳に届いたのは。間延びした話し方と、甘ったるい声音。さらには私のことを「お義姉様」と呼ぶ。……その声を聞いた瞬間、私の身体は身震いした。……何故、何故彼女がいるの? だって、ここはまだまだ辺境の方。王都貴族である彼女が……いるわけが、ないじゃない。そう思いながら私が俯いていれば、「義妹の声も忘れちゃったの~?」と彼女は言い、私に追い打ちをかけてくる。……彼女が、エリカが、どうしてここにいるのよ……!

「……何よ、その目。私はただ、お義姉様に会いに来ただけじゃない。お父様にお願いして、このパーティーの招待状を手に入れてもらったのよ」

 私が顔を上げ、呆然とエリカを見つめていれば、エリカは勝ち誇ったような笑みを浮かべそう言う。……相変わらず、お父様はエリカには甘々なのね。変わらないアシュフィールド侯爵家の日常のことを考え、私は「はぁ」と心の中でため息をついた。……いや、違うか。アシュフィールド侯爵家は変わった。私という邪魔者がいなくなって、理想の家族になった……はず。

「……ったく、あんたが落ちぶれたのを見てやろうと思ったのに、なんだか幸せそうな顔をしていて、胸糞悪くなったわよ。あんたはいつでも俯いて生活をしていればいいのに。綺麗なドレスなんて身にまとっちゃって、おかしいの」

 エリカはそんなことを言いながら、くすくすと笑う。その笑い声も、私を罵倒する言葉も、何も変わっちゃいない。……面倒で、浅はかで、私の不幸を望み続けるエリカそのもの。
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