【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「そうか。ならば、存分に楽しむといい。……まぁ、視察の一環だから、あまり楽しい場所には行けないだろうが……」
「い、いえ、私は街並みを眺めているだけでも幸せなので、それで構いません」

 本当に、それが私の幸せだった。綺麗な街並みを見渡しながら、私は目をキラキラとさせる。途中、男性とぶつかりそうになったものの、ギルバート様がさりげなく肩を抱き寄せてくださったため、事なきを得た。……ただ、ギルバート様はその後すぐに私の肩を放されると、「わ、悪い」とボソッとおっしゃる。……そこまで、自分を卑下されることはないし、私はこの行為を嫌だと思ったわけではないのに。

「ギルバート様。その、私、先ほどの行為別に嫌だったわけではありませんよ?」

 私が首をかしげてそう言えば、ギルバート様は「……そう、か」とおっしゃって少し照れたような表情を浮かべられる。今までギルバート様とたまに身体がぶつかったりしたけれど、嫌だと思ったことは一度もない。そろそろ、それを理解してくださってもいいのになぁ。そう思ったけれど、ギルバート様は大の女性嫌い。ギルバート様の方が、私に触れるのが嫌なのかもしれない。

「シェリル嬢。この後、簡易の食事を摂ろうと思うが……何か、食べたいものはあるか?」

 そして、ギルバート様がそう私に問いかけてこられたのは、街に入って十五分ぐらい経った頃だった。街の視察はまだもう少し時間をかけるため、今のうちに昼食を済ませておこうということらしい。……食べたい、もの。出来れば、その、屋台のものとかを食べてみたいのだけれど……それは、さすがにちょっと無理だろうからなぁ。

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