【完結】年の差十五の旦那様Ⅰ~義妹に婚約者を奪われ、冷酷だと言われる辺境伯の元に追いやられましたが、毎日幸せです!~【コミカライズ原作】
「そうか。ならば、俺も変に手出しはしない。……ただ、何かがあれば遠慮なく助けを求めてくれ。この家の者は、シェリル嬢の味方だ」
「……ギルバート様」

 そのお言葉に、私の胸がきゅんとする。でも、ハッとしてサイラスさんの方に視線を向けてみれば、彼はにやにやとした生温かい目で私たちのことを見つめていた。しかも、扉が少しだけ開いており、そこではクレアとマリンもこちらを観察しているよう。……入ってきて、いいのに。

「エリカ嬢のことも、またいろいろと調べておこう。まぁ、アシュフィールド侯爵夫妻が大切にしていた娘ということだしな。叩けば埃がわんさかと出てくるだろう」
「わ、私も、手伝い……ます」
「いや、シェリル嬢はもうしばらく休んでおけ。今は、ゆっくりと休むことが仕事だ。……あと、万が一シェリル嬢の魔力が暴走した時に備えて、優秀な魔法使いを雇うことにした。いわば護衛だ」

 ギルバート様はそうおっしゃいながら、サイラスさんに資料を戻される。……護衛。別に、そこまでしていただくわけには。そう思ったけれど、この場合謝るよりもお礼を言う方が正しいのだろうな。そう考えて、私は「ありがとう、ございます」と静かに告げた。

「いえいえ、シェリル様はいずれはこの家の奥様となるお方。大切にしなくては――」
「――おい、サイラス。気が早い」

 サイラスさんの言葉に、ギルバート様はそう返されると額を押さえて露骨に「はぁ」とため息をつかれる。ギルバート様は、私に側に居てほしいとおっしゃる。それは、妻じゃなくてもいいと。だけど、使用人の人たちからすれば、やはり奥様になってほしいのだろう。

(私だって、出来ればギルバート様のお側に居たいし、奥様にもなれるのならばなりたいわ)

 少しずつギルバート様に惹かれている以上、逃げたくないとは思う。しかし、やっぱり年の差が気になってしまう。十五も年下の妻なんて、ギルバート様が悪く言われるのは目に見えてわかる。……それに、ギルバート様のご両親もどう思われるか。

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