君はまだ甘い!

第2話 オフ会

クリスマスも過ぎ、一気に年末の慌しさに包まれた今年最後の土曜日。

マヤは朝から忙しく動き回っている。

今日はいよいよオフ会の日。

会社の飲み会以外での外食なんて、離婚前を遡っても随分としていない。
いざ、おしゃれを!、と意気込んではみたものの、元来ファッションには疎い上、ここ数年は洋服を買った記憶すらないマヤの小さなクローゼットの中は閑散としている。
日々のローテーションで着用している出勤用のグレーや紺のスカートやジャケットか、部屋着のスウェットしか見当たらない。

地味だけど一番”オフィス感”が薄い、紺のロングワンピースを選んだ。
購入したのは十年くらい前だけど、癖のないデザインなので、そんなに古臭く見えない(と思っているだけ)だろう。
もうずいぶん放置していて、裾にしわが入っていたので、そこだけ軽くアイロンをかける。


今日はいよいよ、声だけとは言え、1年間毎晩のようにおしゃべりとゲームを楽しんできた彼らとご対面だ。

(みんな、どんな顔してるんだろ?)

自分も顔を晒すのはちょっと恥ずかしい。40も過ぎれば、美人とか期待されることもないか、と自嘲の笑みを浮かべながら、時計を見る。

「やば!」

今日はマヤが幹事を引き受けた。地元民である自分が店を探して予約をするのが一番理にかなっているだろうと、自ら申し出たのだ。

全員にマップを含めたお店情報は送ってある。大阪ミナミにある、昼間も営業している炉端焼きのお店の個室を予約している。
現地集合にしているが、実はマヤ自身も行ったことがない店なので、早目に行って確認しておく必要がある。

集合時間は正午なので、十一時半にはお店に着いて、あとは近所をぶらぶらしておけばよい。
なんとか予定していた電車に飛び乗って、スマホを開くと参加メンバー六人で作ったグループラインに通知がいくつか入っていた。
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