君はまだ甘い!
1年経った現在での常連メンバーはルイ、帝王、マヤを入れて6人ほどになっていた。

皆の居住地は、ルイは神戸、帝王は仙台、キョロちゃん夫妻は福岡、と見事にバラバラだ。
話し合いの結果、これら地域の中間地点に当たり、交通の便もよい大阪が妥当だろうということになった。
シングルマザーであるマヤのことをルイが気遣ってくれていたようでもある。

”キョロちゃん”夫婦も、

「ちょうど大阪観光に行きたいって話してたので、うちらはいいよ!」

と快くOKしてくれた。

この夫婦は奥さんが積極的に発言する。夫はどちらかと言うと、コミュニケーションよりもゲーム自体を楽しむために参加しているようだ。

ゲームの手を止めて、オフ会のプランを話し合っていたちょうどその時、トオルが入ってきた。一か月ぶりだ。

「こんばんは!」

「トオル、久しぶり!ちょうど今、オフ会しようって話してるねん。トオルも良かったらどう?」
ルイが、開催地は大阪になりそう、という所まで説明する。
「大阪、か~」
「あ、そういえば、トオルってどこに住んでるの?」

「あ、オレ、実家は横浜ですけど、今は名古屋で1人暮らしです。大阪には試合で何度も行ってますけど、遊びで行ったことはないな~」

(試合?)

「なんかスポーツしてるのか?」

帝王がすかさず聞く。

「バスケですよ。実業団チームに入っていて・・・。あれ?そっか。言ってませんでしたか」
相変わらず、のんびりした口調だ。

「”肉体労働”って、そういうことか!」

ルイがふっと笑う。


(実業団って?)

ほとんどその知識のないマヤにはピンと来なかったが、その後ルイと、珍しく”キョロちゃん”の夫が喰いついてきて、3人の会話から何となく、
「プロではないが、バスケはプロ並みに上手く、企業で働きながら、チームでプレイしている」
くらいのことがわかった。

(スポーツ選手だったのか)

トオルの”生業”についての話題が一段落付き、オフ会の話に戻る。
スケジュールを確認するためその後離席したトオルが戻ってきて嬉しそうに言った。

「その日、会社は冬休みに入っているし、練習もオフです。翌日は午後から練習があるので、日帰りになりますが、参加します!」

この1年で親交を深めたものの、今だ顔も知らない彼らと、ついに対面できる瞬間を想像して、マヤの胸は期待とワクワク感で一杯になった。



< 10 / 82 >

この作品をシェア

pagetop