君はまだ甘い!
トオルは女きょうだいに挟まれて育った。
三歳下の妹のことを泣かせては、よく父親に殴られたものだ。
四つ上の姉は体格が良く勇ましい性格で、男の自分でも力負けしてよく泣かされた。
悔しくて反撃すると、姉は巧みに被害者を装って父に言いつけ、結局また自分が殴られた。

『女を泣かす男はクズ野郎だ』

叱られるたびに言い放たれる父のこの台詞は、いつしかトオルの心に深く植え付けられていた。
だから、今でも女性が泣く姿を目にすると、反射的に父の拳骨とこの言葉が蘇る。
自分が泣かせたわけでもないのに、なぜか焦燥に駆られたトオルは、思わずマヤの細い肩を掴んで、自分でもよくわからない宣言をしていた。
それから、ポカンと口を開けて自分を見ているマヤに微笑みかけ、決意に満ちた表情を浮かべながら部屋に戻ったのだった。
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