君はまだ甘い!

第4話 不愉快な男

「あ!!オレ聞いたことあるわ、その名前!マジか~~」

ルイが呆気にとられた様子でトオルをまじまじと見つめた。

(フカセトオル)

確かに、スポーツにはあまり詳しくないマヤでも聞いたことがある名前だ。
ネットニュースでも何度か目にしたことがある。

「トオルさん、有名人だったのねー!」

これまた、スポーツに疎そうなキョロちゃんが嬉しそうにトオルの腕を掴む。

「目玉焼きの話よりかこっちやろ、話題振るんやったら」

と言うルイに、マヤも深く同意した。まぁ、自分から振る話でもないかもしれないが。

「いやいや、もう随分前の動画ですよ。てか、まだ残ってたんですね。恥ずかしいです。削除してもらいたいな~」

(顔が良くて、バスケの世界ではそこそこの有名人・・・って。この人、ここにいていい人なの?てか、ゲームとはいえ、自分みたいなフツーのオバサンと最下位争いをしていていいの?)

マヤはそんなことをぼんやり考えながら、呑気に笑っているトオルを見つめていた。

ふと斜め前に座っている帝王の突き刺すような視線を感じたが、ルイ達からトオルへの質問攻めが始まったので、そちらに聞き入るフリをして、目を合わせないようにした。

バスケの話、テレビや雑誌の取材の話、有名選手や芸能人との交流についてなど、聞けば聞くほど、トオルはその世界ではなかなかの傑物であったことが明らかになり、皆が興奮している。
本人は、「オレの話はもういいですよー」と、気恥ずかしそうに頭を掻きながらも、次々と浴びせられる質問に、ひとつひとつ丁寧に答えていた。
そんな中、店員がラストオーダーを知らせに来たので、皆まだ話し足りない様子ではあったが、退室の準備を始めた。
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