君はまだ甘い!
待ち合わせ場所でユカと初対面したトオルは、あの極上の微笑みでユカに「初めまして」と声をかけた。

ユカは彼のイケメンぶりにはさほど心を動かされた様子もなく、最初のうちは警戒心を見せていた。
それでも、トオルの人好きのする笑顔と、おっとりした性格は、すぐに受け入れられたようで、食事が終わるころにはゲームや動画サイトの話で盛り上がり、いつの間にかマヤは蚊帳の外になっていた。

トオルはこの店のお好み焼きをとても気に入ったようで、

「今まで食べた中でダントツに美味しいです!」

と、嬉しそうに笑顔を向けてきたので、マヤもほっと一安心した。

ユカがお手洗いに行き、その日初めて二人きりになった。
しばしの沈黙の後、トオルがおずおずと口を開く。

「マヤさん、今日はほんとに突然誘ってすみませんでした。でも、来てくれて、また会えて本当に嬉しいです」

少し照れたように、使っていたヘラを握り締めて俯く。
距離感が近く、こちらが恥ずかしくなるくらい視線を合わせてきた初対面の時の彼とは別人のようだ。

「いえ、どうせ暇だったし」

(私も会えて嬉しい)と言う代わりに出た言葉。
思ったことを素直に口にできる彼が羨ましいと思う。
冷たい印象を与えたかもしれない、と慌てて続けた。

「こっち方面に来る時は、よかったらまた声をかけてね」

「え?いいんですか?!」

マヤの言葉にハッとしたように顔を上げ、今度は視線をがっつり合わせてきた。
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