君はまだ甘い!

第7話 復縁?

すっかり意気投合し、楽しそうにゲームをしている娘のユカとトオルを微笑ましく眺めていると、インターホンが鳴った。

こんな遅くに誰だろう、と思いながら玄関まで行き、ドア前で、「はい?」と応答すると、「オレ」という、長らく聞いていなかった、しかしあまりにも耳に馴染んだ声が返ってきて、思わず息を呑んだ。

二年近く交信が途絶えていた。次に連絡するとしたら、ユカの結婚式の時くらいだろうと思っていたのに。
よりによって、なんで今日?間が悪すぎる。

恐る恐るドアを押し開けると、不自然に口角を上げて微笑むヒロキが立っていた。
黒のダウンジャケットとマフラーに、下はジーンズ。

元々シャープで整った顔立ちだが、以前にはなかった目じりの皺とわずかに深くなったほうれい線が、自分と同様、四十越えを感じさせる。しかしそれによって、新たに大人の男の色気を漂わせており、益々モテスキルを発揮していそうだ。
鼻を赤くして寒そうに体を揺らしている。

マヤを見ると、「よっ」と言いながら片手を上げた。

「どうしたん、こんな夜遅くに」

元夫を前にして、瞬時に素の自分に戻り、不信感を隠さず尋ねた。

「いや、電話したかったんやけど、スマホ買い換えた時に連絡先が全部消えてもうてん。とりあえず、入っていい?」

言いながら、片足を中に踏み入れた。

「ちょ、ちょっと待って!」

慌てて制止しようとしたが、ヒロキはすぐ、足元にある、母子家庭の家にそぐわない、ひときわ大きな男性物のスニーカーに気付く。

「誰か来てるんか?」
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