君はまだ甘い!
爽やかに晴れた5月の最終日曜日。

神戸にあるその植物園は、200種近くもの花やハーブが四季を通じて鑑賞できる。
お目当ての薔薇はまだ蕾が多かったが、ラベンダーやデージー、マリーゴールドなど、ちょうど見頃の花が競うように美しく咲き乱れ、それらを鑑賞しながら夢中で写真を撮るマヤを見ていると、思わず頬が緩む。

絶好の行楽日和となった今日は、多くのカップルや家族連れで賑わっており、敷地内からロープウェイに乗ると、神戸の街が一望できるらしく、デートスポットにうってつけだ。

(いや、今日はあくまで”お試し”デートだ。調子に乗るなよ、オレ!)

トオルは花を鑑賞しているフリをしながら、隣にいるマヤの表情や行動に目を凝らし、今日一日を成功させることばかり考えていた。

(デートってこんなに緊張するもんだっけ?)

トオルは自分の、豊富とも言える経験を思い返す。
女の子に交際を申し込まれると、嫌ではない相手ならとりあえずOKしていた。
バスケが最優先の生活の中でも、思春期ならではのそういう欲を発散するのに都合が良かった、と言うのが本音だ。
ただ、部活で忙しい合間を縫って行くデートは、正直面倒ではあった。
映画やディズニーランド、動物園など、行き先を決めるのはいつも相手側だったし、自分がリードする、なんてことは無かった気がする。

何よりもまず、これほど緊張したことはない。

今日のマヤは、ジーンズにスニーカー、といったカジュアルスタイルだが、上は少し透け感のある真っ白なブラウスを着ている。
うっすらと透けている、同じく白のタンクトップが体のラインを映し出しており、ウエストの細さが伺える。
白が似合う人だな、と思って、ふと、あの夢を思い出した。

なぜかゴルフ場のグリーンの上で、白の透けるワンピースを纏っていた彼女は、どこか幻想的で、でも触れられた感触はやけに生々しく…。
< 53 / 82 >

この作品をシェア

pagetop