君はまだ甘い!

最終話 君はまだ甘い!

13年ぶりのセックスだった。
ヒロキとは10年レスのまま離婚。
それから3年は、自分が女であることも忘れていたくらいだ。

何年も放置された、埃だらけの小さな宝箱を開けるような緊張感。
薄暗い部屋の中でもわかる、艶々でハリのある若い肉体が窓から入る月明りに照らされている。
それを目の当たりにし、マヤは衰えを隠せない自分の裸体をさらけ出す恐怖に襲われた。

トオルはそんなマヤの心の機微に気付いたのか、まるで弱ったひな鳥に触れるかのように、慎重に、時折マヤの表情を確認しながら、その体を隅々まで探っていった。
そんなトオルの気遣いと優しさに、マヤの緊張が徐々に解れていく。

不謹慎だと思いながらも、ヒロキとの営みを思い出そうとした。
あまりにも久しぶり過ぎて、どうしたらいいかわからない。
いい年をして、相手任せの受け身な女だと思われたくなかった。
しかし、残念ながら、それは何の役にも立ちそうにない。

トオルの長く滑らかな指に触れられた部分は、どこも恥ずかしくなるくらい敏感に反応してしまう。
頭が正常に働かなくなる。
何も考えられず、絶え間なく与えられる刺激に、ただ小さく息を漏らす。

トオルが入ってきたとき、マヤが眉を寄せたのをトオルは見逃さなかった。

「痛い?」

「うっ…。ちょっと…」

「ごめん…」

トオルは動きを止めた。
マヤを挟むように両腕をシーツの上についたまま天井を仰ぐ。
眉間に皺を寄せて、衝動に耐える表情があまりにも扇情的で、体の中心が疼いた。
思わずトオルの頬に両手を伸ばす。そのまま引き寄せ、キスをしながら囁いた。

「トオル、好き…」

トオルは困惑したように微笑んだかと思うと、切なそうに顔を歪め、ごめん、と言ってそのまま体重を乗せてきた。

「あっ…!」

鋭い快感が全身を貫いた。
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