君はまだ甘い!
「マヤ…」

掴むトオルの逞しい背中が汗でじっとりと濡れている。
想像を上回る快感の波が次々と押し寄せ、体と脳が震えた。

大きな体に押しつぶされるように抱きしめられているのに、すべての重圧から解き放たれたように心も体も軽くなり、喜びの絶頂へと導かれる。


トオルは普段はへらへらとしているくせに、セックスにはとても手慣れている感じがした。
悔しく思いながらも、いつの間にか、まるでアイスダンスをするかの様にトオルのリードに心地よく身を委ねていた。

優しくキスをしてくれるトオルに愛しい気持ちが溢れだす。

トオルをもっと好きになる。
もう誰にも渡したくない。
私だけのもの…。

これまでモノクロだったマヤの内側の世界が、活き活きと精彩を放ち始める。
トオルと出会わなければ、ずっと心の奥底で燻っていたであろう、狭くて寒々しい世界。
トオルがその扉を開けて、暖かな春の風と光を送り届けてくれた。

今日、この瞬間を、マヤはこの先一生忘れないのだろうと確信した。
< 78 / 82 >

この作品をシェア

pagetop