百物語。
ちらりほらりと、目に付くのはやはり空から無意味に降ってくる雪であり、それは私の肩に積もってゆく。
雪の感覚はあるのに、冷たいと思えないのはなぜだろう。
何とも不思議で、奇妙な感情を抱いた。
どうしようもなくて、私は動かない足を無理矢理動かすようにして我が家へと戻った。もしかしてお父さんもお母さんもいるかもしれない。普通にくつろいでいたりしたら文句の一つでも言ってやろう。
私はもしかしてもしかしてと、都合の良い方に考えながら再び家への扉を開く。ガチャリ、と無機質な音が響いた。
「お父さん、お母さん」
もう何度言ったか知れない言葉をまた繰り返して言う。
室内に無情に響き渡るだけの自身の声が自分に返ってくる。返答が返ってくることはなかった。
夢なのだろうか。何と悪質な夢なのだろうか?
夢であるに決まっている、忽然と人間が姿を消すなど有り得ない。それに、真夏に雪が降るというのも理解し難い。しかし全てが夢、ということならば理解も出来る。
自分はいつの間に眠ってしまったのだろう、さっき目が覚めた感覚も全て夢なのだろうか。
だったら何が現実なのか最早分からない。
はあ、と溜息をついて、私はリビングに向かいソファーに凭れかかった。
夢の中なら私に出来ることはないに等しい。あ、ほっぺたでもつねってみようか?
よく夢の中では感覚がないと言う。
ああ、それなら雪が冷たいと思わなかったのも理解できる。やっぱり夢だ。
そう思いながら、私は自分の指で思い切り自分の頬を引っ張った。痛くないはずであることはもう分かっているから、遠慮なしに。
けれどそれが間違いだった。
雪の感覚はあるのに、冷たいと思えないのはなぜだろう。
何とも不思議で、奇妙な感情を抱いた。
どうしようもなくて、私は動かない足を無理矢理動かすようにして我が家へと戻った。もしかしてお父さんもお母さんもいるかもしれない。普通にくつろいでいたりしたら文句の一つでも言ってやろう。
私はもしかしてもしかしてと、都合の良い方に考えながら再び家への扉を開く。ガチャリ、と無機質な音が響いた。
「お父さん、お母さん」
もう何度言ったか知れない言葉をまた繰り返して言う。
室内に無情に響き渡るだけの自身の声が自分に返ってくる。返答が返ってくることはなかった。
夢なのだろうか。何と悪質な夢なのだろうか?
夢であるに決まっている、忽然と人間が姿を消すなど有り得ない。それに、真夏に雪が降るというのも理解し難い。しかし全てが夢、ということならば理解も出来る。
自分はいつの間に眠ってしまったのだろう、さっき目が覚めた感覚も全て夢なのだろうか。
だったら何が現実なのか最早分からない。
はあ、と溜息をついて、私はリビングに向かいソファーに凭れかかった。
夢の中なら私に出来ることはないに等しい。あ、ほっぺたでもつねってみようか?
よく夢の中では感覚がないと言う。
ああ、それなら雪が冷たいと思わなかったのも理解できる。やっぱり夢だ。
そう思いながら、私は自分の指で思い切り自分の頬を引っ張った。痛くないはずであることはもう分かっているから、遠慮なしに。
けれどそれが間違いだった。