きみのためならヴァンパイア
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――朝、窓から入るまぶしい日差しを浴びて、目が覚めた。
私は今日からやると決めたことがある。
コップ一杯の水を飲んで、さっそく取りかかった。
「……朝からなにしてんの、お前」
「筋トレ、でしょ、どう見ても!」
水を入れたペットボトルを両手に持ちながらスクワット中の私を、紫月はバカにしているような目で見た。
「へぇ、ご苦労さん」
「見てないであっち行ってよ!」
「……なんで急に、筋トレ?」
「強くなりたいから!」
そう、私は強くなりたい。
ヴァンパイアに襲われても身を守れるように。
それと、紫月を助けられるように。
……正直、私が紫月を助けるなんてシーンは具体的にイメージできないけど、とりあえず強くなるに越したことはないはずだ。
「じゃ、これ飲む?」
そう言って紫月が出したのは、例のカプセル。
「……紫月の血でしょ? 飲んでどうなるの」
確か、ヴァンパイアに飲ませれば言いなりにできるらしいけど。
私は紛れもなく人間だ。
「人間が飲めば、ヴァンパイアになれる」
「のっ、飲むわけないでしょ!」
やっぱ、王族の血、怖すぎ。
「ヴァンパイアは人より強いだろ」
「それはそうだけど! 嫌だよ!」
確かにヴァンパイアは人間より身体能力が高いけれど、だからって自ら進んでそうなりたくはない。
「じゃ、筋トレとかやめとけ」