きみのためならヴァンパイア
男の人は倒れ、他の四人が悲痛な叫び声をあげる。
私のからだはまるで神経が切れてしまったように少しも動かすことができない。
やめて、やめて、やめて!
そんな願いが届くわけもない。
私の父親は容赦なく、男の人に駆け寄った四人を次々と撃っていった。
やがてそこに立つのが、二番目に小さかった男の子だけとなったとき――そこで私は、現実にかえってきた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
飛び起きて、辺りを見回す。寝室。知ってる場所。
身体中が汗で濡れている。
心臓はばくばくと大きな音を立てて、呼吸は一向に整わない。
さっきの夢は、一体なんだったんだろう。
どうして今さら、父親なんかが夢に出てきたんだろう。
あの五人は、きっとヴァンパイアだ。
もしかしてあれは、父親の過去なのだろうか。
そんなの考えたところでわかるはずもないけれど、ひとつだけ、悪夢に心当たりがあった。
――銀のピストル。
あんなものを持ってるから、きっと悪夢をみたんだ。
ピストルを受け取った罪悪感、それをどうしようかという焦燥感。
水瀬に会ってからずっと、何をしていても頭のすみっこでピストルのことを考えてしまっていた。
……今すぐあれをどうにかしなきゃダメだ。
そう思って立ち上がると、寝室のドアが開いた。