きみのためならヴァンパイア
「紫月……」
どうしたの、と声をかけようとして――私は目を疑った。
「これ、どういうことだ」
紫月の手には、銀のピストル。
隠しておいたのに、見つかっちゃった。
私が必死に答えを考えているうちに、紫月はピストルを放り投げた。
「……なんか言えよ」
「これは、えっと、違うの、これは……」
なんて言えばいいだろう。
どうすれば伝わるだろう。
ぜんぶ話す?
……私がハンター一家の血筋ってことも?
嫌。絶対嫌。紫月に嫌われるかもしれない。
「お前、ハンターだったってこと?」
「違う!」
私はハンターじゃない。
ハンターの家系に生まれてしまったけど、私自身はハンターになったつもりはない。
「……それなら――」
紫月が言い終わる前に、私は床のピストルを拾い上げた。
「違うの、私は紫月の敵じゃない! だから、待ってて!」
私はピストルだけを握りしめて、部屋を飛び出す。
私が悪かったんだ。
ずっとどうしようって考えるだけで、行動しなかったから。
ピストルは、水瀬に返す。
もう帰らないってことも、水瀬に話す。
それで、終わりにしよう。
私はもう暁なんて苗字を捨てる。
――それからちゃんと、紫月に話をするんだ。