きみのためならヴァンパイア



「紫月……」


どうしたの、と声をかけようとして――私は目を疑った。


「これ、どういうことだ」


紫月の手には、銀のピストル。

隠しておいたのに、見つかっちゃった。

私が必死に答えを考えているうちに、紫月はピストルを放り投げた。


「……なんか言えよ」

「これは、えっと、違うの、これは……」


なんて言えばいいだろう。

どうすれば伝わるだろう。

ぜんぶ話す?

……私がハンター一家の血筋ってことも?

嫌。絶対嫌。紫月に嫌われるかもしれない。


「お前、ハンターだったってこと?」

「違う!」


私はハンターじゃない。

ハンターの家系に生まれてしまったけど、私自身はハンターになったつもりはない。


「……それなら――」


紫月が言い終わる前に、私は床のピストルを拾い上げた。


「違うの、私は紫月の敵じゃない! だから、待ってて!」


私はピストルだけを握りしめて、部屋を飛び出す。


私が悪かったんだ。

ずっとどうしようって考えるだけで、行動しなかったから。


ピストルは、水瀬に返す。

もう帰らないってことも、水瀬に話す。


それで、終わりにしよう。

私はもう暁なんて苗字を捨てる。


――それからちゃんと、紫月に話をするんだ。


< 83 / 174 >

この作品をシェア

pagetop