捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
 その後、私はお金を払ってヴィリバルトさんと共に帰路についた。

 彼は街の外れに邸宅を構えて一人で住んでいるらしい。なんでも、親との仲があまりよくないと……。

「なんでしょうね。心配してくれているっていうのは、分かるんです。ただ、同居してるとうるさくて、鬱陶しくて。口喧嘩が増えたので、いっそ別に住もうって話になって」

 邸宅まで歩く間、彼はそんなことを教えてくれた。

「あと、ギード……ドラゴンと一緒に住むってなると、実家では手狭だったので」
「そう、なのですね」

 確かにドラゴンってかなり大きいし、専用の建物まで用意しなきゃいけないって聞くし。

 そうなれば、街の外れに邸宅を構えたのもある意味納得だった。

「……ドラゴンさん、ギードっていう名前なのですね」

 しばらくして、私はそう問いかけた。彼が少しの間をおいて、頷いてくれた。

「はい。俺が付けたんです」
「いいお名前ですね」

 淡々と言葉を交わし合う。ヴィリバルトさんはいろいろなことを教えてくれた。

 ドラゴンさん……ギードさんとは子供の頃からの付き合いだとか。ドラゴンは肉食で、とんでもない量を食べるとか。実は乗り心地はあんまりよくなくて、割と身体が痛くなるとか。

「……ギードは、俺にとっていわば家族なんです」

 しみじみと彼がそういう。その言葉には、嘘なんてこもっていないように思えた。本気で、彼はギードさんのことを家族だと思っているんだろう。

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