捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「よかった。何度か来たんですけど、返事がなかったんで……」

 ヴィリバルトさんが肩をすくめてそう呟く。なので、私は曖昧に笑った。

「今、起きたところなのです……」

 誤魔化すように苦笑を浮かべれば、彼は大きく頷く。それから、私のほうに近づいてきた。

「体調どうですか? 昨日酔いつぶれてましたけど……」

 やっぱり。眠る前の記憶がないのは、酔いつぶれたからなんだ……。

(見知らぬ人の前で酔いつぶれるって、貴族令嬢としてそれはどうなの……?)

 危機感がないどころの騒ぎじゃないだろう。

 と思ったものの。私はもうすでに貴族令嬢じゃない。だから、誰かに口うるさく注意される意味もない。

 ただ唯一。思いきり迷惑をかけてしまったヴィリバルトさんにだけは、謝らないとならない。

「その、ご迷惑をおかけして、すみませんでした……」

 頭を下げてそう言えば、ヴィリバルトさんは「いえいえ」と言って手をぶんぶんと横に振る。

「俺のほうこそ、すみません。勝手に屋敷に運んでしまって……」
「い、いえ! どうせ行く当てなんてなかったので!」

 自慢できることじゃないけど。

 そう付け足しつつ、私もぶんぶんと手を横に振る。

 二人そろって手を横に振っていると、なんだかおかしくなって。私たちは、どちらともなく笑ってしまった。

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