捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「え、えぇっ……」

 恐る恐る一歩を踏み出して、右を見る。……明らかに、このお屋敷は広い。

「ヴィリバルトさんって、何者……?」

 いや、確か竜騎士だと言っていたような気もする。

 ……竜騎士って高給取りだというけれど、こんな大きなお屋敷を持てるほどなのだろうか?

 あと、こんなにも豪華なお屋敷を建てるのだろうか?

(……うーん、なんか、変な感じ)

 ぽりぽりと頬を掻きつつも、私はとりあえずとヴィリバルトさんの元に向かうことに。

 すたすたと廊下を歩いていると、視界に入るものすべてに一々意識が奪われる。

 置いてあるものもさながら、なによりもセンスがいい。嫌味がないというか、なんというか。

「……なんか、不思議なお人ね」

 ぽつりとそう言葉を零して、突っ切った先にあるお部屋の扉の前に立つ。

 ほかの扉よりも二回りほど大きな扉には、繊細な模様が彫られていた。……見た感じ、竜だろうか。

「本当、竜が好きなのね……」

 そう思ったら、なんだか安心できた。

 だって、私も竜、ドラゴンが大好きだから。……話が合わないことはないだろうな。そう思えたのだ。
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