捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「最近あまり人に振る舞っていなかったので、不安だったんです」

 ヴィリバルトさんはなんてことない風にそう言って、肩をすくめた。

 ……その表情は本当に安心しているかのよう。でも、私にはそれよりも重要なことがあって。

(このお料理、ヴィリバルトさんが作ったの……?)

 ぽかんとしつつ、料理を見つめる。

 私のその姿を見たヴィリバルトさんが、笑った。

「この邸宅には俺しかいませんからね。すべてのことにおいて、自分でしなくちゃ」

 彼はさも当然のようにそう言うけれど。それって、すごく立派なことなんじゃないだろうか。

「……その、わた、しは」

 私にもなにか出来ないだろうか。

 そう言おうとして、ヴィリバルトさんに手で制された。

「メリーナさんはお客さんですから。なにもしなくていいんですよ」

 にこやかに笑った彼が、そう告げてくる。

 確かに、それはそうなのかもしれない。けど、迷惑をかけている自覚はあるのだ。なにか、恩返しくらいしたい。

「ですが、私、本当ご迷惑ばっかりかけていて……」

 酔い潰れたこともそうだけれど、一晩泊めてもらったことも。本当に申し訳なくて仕方がない。

 眉を下げてそう言えば、ヴィリバルトさんは「気にしないで」と言ってくれる。

「俺がしたくてやっていることですから」

 そう言われても、私はやっぱり納得できない。
< 31 / 65 >

この作品をシェア

pagetop