捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「……ですが、ご迷惑では?」

 が、易々とその提案を受け入れることは出来ない。だって、この提案だと。

 ――彼に、利益がちっともないのだ。

(人間とは、利益を求めるものではないの?)

 利益、もしくは対価。そのどちらかが発生していれば、私だってここまで迷うことはなかったと思う。

 ……しかし、そんな私の考えは彼には通じなかったらしい。ただただ、肩をすくめていた。

「迷惑だなんて、そんな。……俺が好きでやっていることなので」

 彼の言葉から、嘘はちっとも感じられない。彼は本気でそう思っている。どれだけ、お人好しなのだろうか。

(というか、よくもまぁこんなお人好しの人物が、一人で生きてこられたわね……)

 もしくは、竜騎士という身分があるから、変な人間が近寄ってこなかったのかも……と、思いつつ。

 私は考えてみる。けど、答えなんて最初から出ているようなものだった。

「その、えぇっと」
「はい」
「私、本当になにも出来ません。なので、本当にご迷惑というか、邪魔になると、思います」

 とりあえず、このことは念押ししておかなくちゃならない。

 その一心でそう告げれば、ヴィリバルトさんは大きく頷いていた。
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