捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
 視線で問う。彼はなにも言ってくれない。

「あなたを一人で買い出しに行かせるわけにはいきません。……道に迷う可能性だってありますし、荷物だって重いんです」
「それくらい平気です。ここに来てから、ある程度の荷物は持っていますし」

 反論するものの、彼の反応はあまりよくない。

「今日の分くらいはありますから、明日一緒に行きましょう」

 彼は善意で言っている。わかっているのに、どうしてこんなに胸がもやもやするのだろうか。

 唇をかみしめて、こぶしを握る。私は彼のことを信用している。恩もある。

 ただ、最近彼の行動に不満を抱くようになった。……そんな立場じゃないのに。

(ヴィリバルトさんはとっても過保護。私のことを、目が離せない子供みたいに思っている)

 これでも大人だ。子供扱いは嫌に決まっている。

「ですから、待っていてください。いつも通りギードのところには行っていいですから」

 私の肩に手を置いて、彼は部屋に戻っていった。

 対する私は、足が縫い付けられたみたいに動けない。

 じっと床を見つめて、唇を噛む。

 彼は優しい。彼は頼りがいがある。彼は穏やか。

 一緒に暮らしていて不満を抱くような人ではない。

 たぶん、私は贅沢になっているのだ。もっともっと――って、強欲になっている。

 ヴィリバルトさんの役に立ちたい。少しでも彼の負担を減らしたい。

 だけど、私のその願いは彼にとっては迷惑なのだろう。

 そして、同時に私の中にある「もっと彼を知りたい」という気持ちも、迷惑かもしれない。

 彼は優しいから、面と向かっては言わない。けど、のらりくらりと躱している。

 それがなによりの証拠だった。
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