捨てられ令嬢ですが、一途な隠れ美形の竜騎士さまに底なしの愛を注がれています。
「劇の脚本とは、主に恋愛を軸に作ります。ですが、それだけじゃありません」

 それはそう。けど、どうして彼はこんなことを言うのだろう。

「間違いじゃなかったら、メリーナさんはよく社交界で流行る演目は好きじゃないですよね?」

 ……言い当てられて、困る。

 沈黙は肯定と受け取ったのか、ヴィリバルトさんは説明をやめない。

「演目にもいろいろあります。流行りのものしか知らないのなら、それはもったいないと思います」
「食わず嫌いだと、言いたいのですか?」
「簡単に言うとそうなりますね」

 彼の言いたいことはわかるし、その主張は最もだと思う。でも、やっぱり――。

「それに、俺はほかのだれかじゃなくて、メリーナさんと行きたいんです」

 前髪越しに、ヴィリバルトさんが私をじっと見つめている気がした。

 こんな風に言われると、弱い。本当に弱い。私はたぶん、この人限定ですごくチョロい。

「わ、わかりました……」

 もう、折れるしかない。渋々の返事だったけど、ヴィリバルトさんは気を悪くした様子もなく、満足そうにうなずく。

「明日は昼前にここを出ましょう。――すごく、楽しみです」

 彼の嬉しそうな声に「まぁいいか」と思うのは、惚れた弱みなのだろうか。

(この気持ちから、いつまでも目を逸らせるわけがない)

 いつかは向き合わなくちゃならないのだろう。だけど、今じゃない。

 どうか今だけはこのままで、穏やかなままの関係でいたい。私は彼の同居人で居続けたいから。
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