イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
「キャーッ!」
「かっこいい〜!」
周りの女子たちが一斉に騒ぎ出し、静かだった教室はあっという間に賑やかになる。
「うそ。あれ、一堂慧先輩じゃん」
「えっ、“ 一堂慧先輩 ” って? もしかして、真織の知り合い?」
派手な髪の彼のほうを見て声をあげる真織につられて、わたしもそちらに目をやる。
てっきり、真織の知り合いの先輩が教室に入ってきたのかと思っていたら。
……え。
わたしは、女子に囲まれている彼の顔を見て固まってしまった。
だってその人は、春休みに公園で失恋したわたしのことを笑った、あの失礼男だったのだから。
「知り合いも何も。ひとつ年上の一堂先輩は、中等部の頃から学校一のイケメンって有名だったじゃない」
うそ。あの失礼男って、わたしと同じ花城学園の人だったの!?
中学の頃は毎日小林くんに夢中で、他の男の子のことなんて興味なかったから。全然知らなかった。
「しかも一堂先輩って、あの一堂グループ社長の跡取り息子なんだよね。中等部の受験のときは、成績トップだったらしいし。頭が良くてイケメンで家柄も良いって、最高よね」
杏奈まで、憧れの眼差しで失礼男のほうを見ている。
一堂グループとは、不動産や食品、更にはホテルまで、国内外を問わず様々な事業を展開する日本でも有数の大企業だ。
「へぇーっ、そうなんだ……」
一堂グループの御曹司。まさか、あの失礼男がそんな凄い家の人だったなんて。
わたしがもう一度失礼男のほうに目をやると、彼とバッチリ目が合ってしまった。