イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない
わたしと杏奈は、互いに顔を見合わせる。
「ああ……うち、実は春休みに親が離婚してさ。苗字が、仲川から北島に変わったんだよね」
え!? り、離婚!?
真織の予想外の言葉に、わたしは口を閉ざしてしまう。
友達の親が離婚したときって、なんて声をかけたら良いんだろう。
……わたしもお父さんが亡くなったときに感じたけど、家族と離れ離れになるのってきっと辛いよね。
友達とはいえ家庭のことまでは詳しく知らないけれど、真織のことを思うと胸が痛む。
「ごめん、真織。わたし、何も知らなくて」
「まおりん、大変だったよね。ごめんね……」
「ちょっと、ちょっと! 二人ともそんなに暗い顔しないでよ」
そう言う真織の声は、意外と明るい。
「両親は、ここ数年は別居婚みたいなもので。あたしはずっと、お母さんと二人だけの生活だったから。苗字が変わったこと以外は、別に何も変わらないし。あたしはもう全然平気!」
真織の普段と変わらない笑顔を見て、わたしは胸を撫で下ろす。
思ったよりも元気そうで良かった。
「でも、真織。無理だけはしないでね?」
「私で良ければ、いつでも話聞くから」
「ありがとう、依茉、杏奈。さあ、暗い話はここまで。これからは、北島真織として今まで通りよろしくね!」
それからわたしが、杏奈と真織と3人で昨日のドラマの話をしていると。
「みんなー。おっはよーう」
ハチミツ色の派手な髪の男子生徒が、大きな声で挨拶をしながら教室へと入ってきた。