イケメン御曹司は、親友の妹を溺愛して離さない


「……ぐすっ」


 わたしの頬に、冷たいものが流れる。


 ああ、小林くんのことを思い出していたら、また涙が出てきた。


「小林くん……本当に好きだったよ」


 こんな辛い思いをするくらいなら、もう恋なんて二度としたくない。


「あれ。失恋ちゃん、また泣いてるのー? 泣いてると、顔が不細工になるから。やめな〜」

「え!?」


 ぶ、不細工になるって。この人、またしても失礼すぎない?!


 いつの間にか目の前に立っていた失礼男を、わたしは睨む。


「ねぇ、ケイくん。こんな子の相手なんかしてないで、早く行こうよぉ」

「そうだね。それじゃあ、失恋ちゃん。俺は彼女とこれからデートだから。じゃあね〜」


 彼女と手を繋ぎながら、ケイと呼ばれた男はわたしの横を通り過ぎていく。


 失恋した人のことを笑ったかと思えば、不細工だとか言うし。更にはわたしのことを『失恋ちゃん』とか、変な呼び方するし。


 本当になんなの、あの人は。第一印象、最悪なんだけど。


 二人が歩いていく後ろ姿を、わたしはキツく睨みつける。


 あんな最低な人、もう二度と会いたくない……!


 まぁ、どこの誰かも分からないし。この先、彼に会うことはないだろうけど。


「よしっ! こんなときは甘いものでも食べて、嫌なことは忘れよう」


 そう呟くと、わたしは行きつけの大好きなカフェへと向かって歩き出した。


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