α様は毒甘な恋がしたい

 私はソファから立ち上がった。

 両手両足が縛られているから、よろっとフラついちゃったけれど。

 祈さんの心の奥の奥にまで届いて欲しい、メッセージ。

 お互いの目の距離を、なるべく近づけて私は伝えたい。


 倒れないよう、靴の裏全体で床を捕まえる。

 振り向いて欲しくて

 私の目を見て欲しくて

「祈さん!」

 芯のある声を、ポニーテールが揺れる華奢(きゃしゃ)な背中に突き刺した。


 私に顔を向けた祈さんは、ぐちゃぐちゃなくらい頬が濡れていて。

 今も涙を流し続けていて。

 5メートルほど離れた距離すら縮めたい私は、ピョンぴょんピョン。

 縛られた両足ジャンプで祈さんのもとへ。


 でも明らかなる計算ミス。

 推測ミス。

 ストップ時にかかる前方移動は、考慮しきれず……

「ひゃっ!」

 気づいた時には、私の頬が祈さんの胸に沈み込んでいた。

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