腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー


「とりあえず出ていって、実家でゆっくりしてくればいいんじゃない?」


 私はこんな尚人を好きになったはずじゃない。それとも、これが尚人の本性だったんだろうか。


 尚人に対して表面上しか見せていなかったように、尚人自身も裏の顔があったんだろうか。


 辞表を出したからといって、すぐすぐ辞めれるわけもなく、今月いっぱいは働かなくてはならない。けれど、尚人はすぐに出て行ってほしそうな素振りを見せていて、私はここにいてはいけないんだと察した。


 私がこういう状況にも関わらず、尚人は一刻でも早く浮気相手をここに呼びたいらしい。


 行く宛もないまま、仕方なく大きいバッグとキャリーケースに荷物を詰める。


 貴重品、化粧品類、衣類、最低限の物をバッグに入れて、マンションを出た。


 今が夏でよかった。


 もう夜の七時だけれど、外はそんなに真っ暗というわけではない。

 ベリが丘は街頭が多いため、夜でも明るく安心だ。

 ベリが丘に友達がいるわけでも、職場の人に頼れるわけでもない私は、自然と鞄の奥に潜めていた一枚の名刺を取り出し電話をかけていた。


 助けて、助けて、助けて……暖。


 私にできる見返りならなんだってするから。お願い、助けて……


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