腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー


 2コールめで、

『お電話ありがとうございます。東郷弁護士法律事務所です』

 暖の声が聞こえた。それだけで安心して「う、ぐっ、ずっ」涙がこれでもかと思うほど溢れる。


『…………あの、もしもし?』


 暖が不思議そうな声で、電話越しで尋ねた。今自分が出せる声をめいいっぱい出す。


「……暖、私、有栖川」


『……ん? 和歌?』

「お、追い出されて……職場もやめることになって……働き場所もないし、行くところなくて……」


 上手く説明ができない私に、

『ちょい、まてまて。今どこにいる? 迎え行くわ』

 暖の喋り声と共に、ガチャガチャとドアが閉まる音が聞こえる。


「今……サウスエリアのショッピングモールの入口まで歩いてきたところ……」

『分かった。そこから絶対動くなよ。ついでになんか飯食べようぜ』

「う、うん……」


 暖は私の泣いている理由は、さほど気にしていないようで、自分の空腹を満たすことで頭がいっぱいらしい。電話を切り、ショッピングモールの入口より端に座っていると、暖の車が駐車場に入ってくるのが見えた。


 車を降り息を切らしながら、私服姿の暖が私の方へ走ってきてくれている。


 服装はこの間のようなスーツ姿ではなく、ワイシャツのグレーの長袖と薄手の黒のパンツズボンというラフな格好をしていた。


< 37 / 186 >

この作品をシェア

pagetop