腹黒弁護士に囚われて、迫られて。ー輝かしいシンボルタワーで寵愛されていますー


 頭を抱えている時、俺のスマホの着信音が鳴り響いた。着信相手は和歌。この電話に出たら、真島の時みたいに『もう辞める』と言われてしまうのだろうか。


 ごくっと息を呑み、「はい、東郷です」電話に出た。


『暖……どうしよう、尚人から連絡きてた』


 和歌の声はパニックになっており、震えていた。


「……連絡?」

『うん。私の荷物が無いのバレたみたい。なんで和歌の荷物がないのって……スマホ切ってて気づかなかったんだけど、電源つけたら凄くメッセージが届いてて。電話した方が良いのかな……』


 『それにお母さんからも連絡来てたの』と、不安な声を上げていた。


 確かに、昨日の今日だ。
 和歌が出て行ったことは知られていて当たり前だ。


 もしかしたら和歌の実家にも連絡しているのかもしれない。


「もう内容証明書は出したか?」

『――ううん、まだ……』

「出さずに、その場で待機してて。俺がそこに行くまで、尚人に連絡返さなくていいから。親にも連絡すんな」


 急いでパソコンにメモリーカードが入っているか確認して、尚人の確たる証拠を突き出せる準備をし、仕事で使う鞄を手に持ち、事務所を出た。


< 94 / 186 >

この作品をシェア

pagetop