つれない男女のウラの顔
「親御さんの顔を見たら安心したら眠くなってきたんじゃないか?着いたら起こしてあげるから、寝ていいよ」
「いえ、私は大丈夫です。それより成瀬さんは大丈夫ですか?いつでも休憩してくださいね。むしろ仮眠を取っていただいても…」
「花梨が喋ってくれていたら眠くならない気がする」
「そうですか、では何を話しましょう…」
普段から会話をすることに慣れていないから、瞬時に話題を見つけられない。眉間に皺を寄せて考えていると、先に口を開いたのは成瀬さんだった。
「ご両親とは他にどんな会話を?」
険しい顔をする私をチラッと見た成瀬さんが、クスッと笑みを零しながら問いかけてくる。
そんなに変な顔をしていただろうかと、サイドミラーでさりげなく自分の顔を確認すると、確かに酷い顔をしていた。恥ずかしい。
「そうですね、母はお喋りだって話とか…」
「お喋り?花梨には似てないんだな」
「そうなんです。母はどちらかというとコミュ力が高い方で、近所の人にもすぐに話しかけちゃうタイプです」
「意外だな。俺の兄貴みたいな感じか」
そういえば成瀬さんのお兄さん達は、成瀬さんと違って賑やかだって言ってたな。どんな人なんだろう。顔は成瀬さんに似ていたら、美の戦争になってしまう。それはそれでちょっと見てみたいけど。
「他には?」
「あとは…父の夢の話…とか」
「夢?」
言いかけて、尻すぼみになった。内容が内容なだけに、少し話しづらい。
「私の花嫁姿が見たいって。私とバージンロードを歩くのが夢らしいです。それまで死ねないって、笑ってました」
「…なるほど」
成瀬さんは私が男性が苦手なことを知っている。もしかしたら「それは無理な夢だ」って思ったかもしれない。
けれど成瀬さんは否定せず「確かに自分に娘がいたら、花嫁姿を見たいと思うのかもしれないな」と呟いた。