つれない男女のウラの顔
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「本当にありがとうございました。寝る時間はあまり残っていませんが、ゆっくり休んでくださいね」
私の願いも、ちいさな妨害も虚しく、結局サービスエリアで一度休憩しただで、あっという間にアパートに着いてしまった。
おまけに、夜間の道路は驚くほど空いていて、予定より早く到着する始末。
成瀬さん体のことを考えたらこれでよかったのだけど、もう少しあの車に乗っていたかったというワガママが、私の心を支配している。
とても離れがたい。
「お疲れ様。花梨もゆっくり休んで」
「はい…」
そんなに優しい目で見つめないで。どんどん寂しさが込み上げてくるから。
これが一生の別れではない。それどころか、職場も同じで部屋は隣。いつでも会える距離なのに、なぜかひとりで部屋に入る勇気が出ない。
この数時間があまりにも濃厚だったから、ひとりになるのがちょっと怖い。
「…ひとりで大丈夫か?」
「え?」
まるで私の心の中を読んだかのような言葉に息を呑んだ。咄嗟に「全然大丈夫です」と返すと、成瀬さんは「そうか」と言ったあと続けて口を開いた。
「親御さんに会えて少しは安心出来たかもしれないけど、まだ不安は続くだろうから。もし何かあったらいつでもインターホンを鳴らしてくれたらいい」
「…優しすぎでしょ」
「ん?」
「いえ、ありがとうございます。とても心強いです」
思わず本音が漏れて、慌てて誤魔化した。
チラッと成瀬さんを捉えると、なんだかいつも以上にかっこよく見えた。元々イケメンだけど、なぜかキラキラ輝いて見える。寝不足で目がおかしくなったのだろうか。
「じゃあおやすみ」
「はい、おやすみなさい」
ドアを開けて、自分の部屋に入った。シンと静まり返った部屋にひとりきりになった途端、一気に現実に引き戻されて、力が抜けた。
成瀬さんは隣の部屋にいるのに、この距離がもどかしい。離れた瞬間から会いたくなる。
───ねえマイコ。これって本当に推しに対する気持ちと一緒なの?