つれない男女のウラの顔
「あ、もしかしてお付き合いされたばかりとかですか?」
「え…と、そうですね、そんな感じです」
「なるほど!それにしても彼氏さん、めちゃくちゃイケメンですね。彼女さんもお綺麗で、ほんとお似合いです」
どうやら私達はいま、付き合いたてのカップル設定らしい。
手を繋いでいるせいで、こういう設定にするしかなかったことは分かっている。だけど成瀬さんがこの設定を受けいれてくれたことが嬉しくて、嘘だと分かっていてもつい顔が綻んでしまう。
どうしよう、体が熱い。思わず俯いた私の顔は、耳まで真っ赤になっていると思う。
「わぁ、おふたりとも初々しい感じでめちゃくちゃ良いですね。是非その表情を写真におさめたいのですが」
カメラマンの男性がおふたりともなんて言うから、チラッと横目で彼の顔を確認すると、成瀬さんの頬がほんのり赤くなっているのが分かった。
「シャッター押してもいいですか?」とカメラマンの男性に煽られた成瀬さんは「この顔は勘弁してください」と恥ずかしそうに視線を伏せている。
基本的に余裕そうな顔をしているのに、時折見せるその照れた顔にキュンとしてしまう。
女性慣れしていないのが伝わってきて、ちょっと嬉しい。
「僕としてはどうしてもおふたりを撮りたいのですが…」
「すみません、写真は苦手なので」
「そこをなんとか、1枚だけでも!SNSにはアップしませんし、DMいただければ写真のデータは差し上げますので、記念に是非…」
食い下がるカメラマンに、眉を下げて言葉を詰まらせる成瀬さん。
「あ、あの…」
そこで、ずっと黙っていた私がふたりの会話に割って入るように口を開いた。
「SNSにアップしないのなら…私は彼との写真が欲しいです。1枚でいいので…」
思い切って本音を伝えれば、驚いた表情をした成瀬さんと目が合った。
すみません、と視線で謝りながらも、どうしても成瀬さんとの思い出の写真が欲しかった私は「1枚だけなので…」と懇願する。と、成瀬さんは諦めたように「わかった」と渋々頷いてくれた。