つれない男女のウラの顔

「でもシンヤと別れるのも早かったみたいだし、それから浮いた話も聞かなかったから、京香は恋愛を避けてんのかと思って結局何も出来なかった。京香は男が苦手なことも知ってたし」

「……」

「だったら恋人としてじゃなく幼なじみとしてずっと傍にいようと思った。他の男とは関わろうとしないのに、俺には普通に話しかけてくれるのが嬉しかったし、この関係を壊したくなかったから」


匠海くんは優しい人だと思っていたけど、誰に対しても優しかったから、まさか私のことをそこまで考えているなんて思わなかった。

もしかして私、今まで無意識に匠海くんのことを傷付けていた?それなのに、匠海くんはずっと私のことを大事にしてくれていたの?


「まぁこれは完全に言い訳で、ただ普通に初恋を拗らせてただけなんだけど」


関係を壊したくないという匠海くんの気持ちは、痛いほどよく分かる。私も成瀬さんに対して同じ気持ちを抱いているから。

だけど私が成瀬さんへの気持ちに気付いたのはつい最近の話だ。それに比べ、匠海くんは…。


「…匠海くんの気持ちに、全然気付いてなかった。ごめんね…」

「謝るなよ。ヘタレな俺が悪いんだから。京香に対して“可愛い”は平気で言えるのに、肝心な“好き”の一言がどうしても言えなかったんだよな。でも、この歳になってやっと伝える決心が出来た。というか、キッカケをもらったから今しかないと思って」

「キッカケ…?」

「おじさん、京香の花嫁姿を見たいって言ってたんだろ?京香とバージンロードを歩くのが夢なんだって」


どうやら母は、匠海くんにそのことも話したらしい。ほんとおしゃべりな母親だ。


「だから俺からおばさんにお願いしたんだ。京香の相手、俺じゃだめかって」

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