つれない男女のウラの顔
「…っ」
不意打ちの甘い攻撃に、声が出そうになるのを必死に耐えた。成瀬さんの唇が触れたところが熱くてぞくぞくする。初めての感覚に思考が停止する。
もしかして、このまま最後まで…?
そう思った途端、一気に期待と不安が押し寄せてきた。
初めての相手が成瀬さんなら嬉しいし、このまま成瀬さんに溺れたいという気持ちもあるけど、その反対に未知の世界に足を踏み入れるのが怖かった。
何をどうすればいいのかも分からないし、自分がどうなってしまうのかも想像出来ない。初めては痛いってよく聞くけど、もしその痛みに耐えられなかった時にどうすればいい?途中でストップしたら、空気をぶち壊してしまうのかな。
でも一番気になるのは、私なんかで成瀬さんを満足させられるのかってこと。…やばい、考えれば考えるほど不安の方が勝ってしまう。
「…京香、大丈夫か?」
ふいに聞こえてきた声に、ぎゅっとかたく閉じていた瞼をゆっくり開けた。私の緊張に気付いたのか、心配そうに私を見つめる成瀬さんと視線が重なった。
「すみません…頭がパンクしそうで…余裕が全然なくて…」
「そんなの、俺も同じだよ」
嘘だ。私に比べたらかなり落ち着いていると思う。
今の私は1ミリも余裕がなく、全身に熱が帯びていて顔はリンゴに負けないくらい真っ赤になっているはずだ。
「嫌ならこれ以上はしない」
「いや…なわけ、ないですよ…」
嫌なわけない。ただ不安なだけ。
でもこの不安を悟られたら、成瀬さんはこれ以上何もしてこないだろう。それはそれで嫌だった。だから「やめないで」の意味を込めて自分からキスをすると、そのままソファに優しく押し倒された。