つれない男女のウラの顔

まるで尋問のような空気に、肩をすぼめて視線を伏せた。成瀬さんは表情を変えないままパソコンと向き合っているけれど、その手は動いていない。


「あいつとはなるべく関わらない方がいい」

「そう…なんですか?」

「女癖がかなり悪いと聞いている」

「えっ…?」


女性に優しいという話は聞いたことがあるけど、女癖が悪いというのは初耳だ。

そもそも品管では成瀬さんの話題はよく出てくるけど、石田さんの話はあまり聞いたことがない。

だから石田さんの情報が少ないのか。女癖が悪い人…覚えておこう。


「社内にも手を出された女性社員が数人いるらしいし、三股は当たり前という噂もよく耳にする。おまけに“浮気は伝統”が口癖で、ろくな男ではない」

「わあ…それはワイルド」


浮気どころか、恋愛に疎い私とは住む世界が違い過ぎて他人事のように聞いてしまう。とはいえ、私も危うくその被害者のひとりになりそうだったのかと思うと、少し怖くなった。


「そんな人だなんて知りませんでした…」

「いきなり連絡先を交換しようとする時点で危ない奴なんだよ。花梨はガードが固いと聞いていたが、よりによってあの男に連絡先を教えるとは…無防備過ぎるな」

「ですよね…すみません」


成瀬さんの言う通りだ。いくら焦っていたとはいえ軽率だった。連絡先を交換してしまったことも、あの場で鍵を落としてしまったことも悔やまれる。

しゅんと肩を落として、小さく溜息を吐く。するとパソコンの画面に向けられていた成瀬さんの視線が、ゆっくりと私に移った。


「悪い、少し強く言い過ぎた。別に怒っているわけではなくて、ただ…」


成瀬さんの表情が、微かに柔らかくなった。


「花梨が傷付くところは、見たくないから」


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