つれない男女のウラの顔
振られたのはもちろん私の方。その原因も分かっている。
その頃の私は、彼とのメッセージのやりとりや電話は楽しかったけど、会いたいとは一度も思わなかった。だからデートの誘いを受けても毎回理由をつけて断った。新幹線で1時間半の距離を「会いに行く」と言ってくれていたのに。
次第に彼からの連絡が減っていった。けれど私は、彼はただ忙しいだけなのだと思ってあまり気にしていなかった。彼の気持ちが徐々に離れていることに気付けなかったのだ。
恋愛未経験者だった私は、付き合ったばかりの頃の“ずっと一緒にいよう”の言葉をただ信じていた。会わなくても“好き”と言われたら安心していた。
だけどある日突然別れを告げられ、呆気なく“お付き合い”は終了した。交際期間2ヶ月のスピード破局だった。
振られた直後は心にポッカリ穴が空いて、暫くの間夜になると泣いていた。彼と連絡を取り合っていた時間帯は特にキツかった。
私の中で少しずつ“この人でいい”“ずっと一緒にいたい”と思い始めていた矢先のことだったから、余計にショックを隠しきれなかった。
でも今なら分かる。そんな付き合い方で長続きするはずがないと。
大学生の男子が、会おうとしない彼女を必要とするはずがないのだから。
あの時、一度でもデートをしていたら何か違ったのかもしれないけど、その事に関して後悔したことは一度もない。結局私の気持ちもその程度だったのだと思う。
だけど、その頃に聴いていた音楽を耳にすると今でも彼を思い出す。春の匂いが甘酸っぱい関係を甦らせる。
今となってはいい思い出だけど、その時に察した。私は恋愛に向いてないのだと。
「デートの経験もなければ、彼に触れたことは一度もありません。彼氏彼女という名前だけの関係で、実際は何もなく終わりました。なので、男性に免疫がないのは間違いないですね」
「未練は?」
「全くないです。むしろ相手に悪いことをしてしまったと反省しています。軽率にお付き合いするべきではなかったと」
28歳にもなって、語れる恋愛話はこれだけ。経験値はかなり乏しい。
「引きました?」
「…いや、花梨らしくていいんじゃないか。それにそういう経験も大事だろうし」
──こんな時でも否定しないんだ。
ブレない優しさが嬉しくて、つい顔が綻んでしまう。