つれない男女のウラの顔
「びっくりしました?」
「聞き間違いかと思った」
「ですよね。でも安心してください。実際はカップルらしいことを何もしなかったので」
「どういう意味だ?」
「遠距離だったんです。高校の卒業式の日に告白されて、勢いでOKしたんですけど、その後相手の方が遠方の大学に進学しまして…」
卒業式のあと、同じクラスだった男子に連絡先を聞かれた。その日の夜に、告白の文章がメッセージで送られてきた。
普段なら警戒するのに、卒業式の日というのもあって少し浮かれていたのだと思う。私はすぐにOKの返事をした。
同じクラスだったその人は、授業態度も真面目で、誰にでも優しい人だった。私はその人に恋心を抱いていたわけじゃないけど、印象も良かったし、何より幼なじみの匠海くんとも仲が良い人だったから安心感があった。
男性が苦手で恋とは無縁。だけど、皆が当たり前のようにしているキラキラした恋愛に密かに憧れていた。“付き合う”という経験をしてみたかった。
それに彼が遠方の大学に進学することも知っていたから、コミュ障で異性に不慣れな私には遠距離がピッタリだと思った。
そんな不純な動機で告白をOKして、私達の交際はスタートした。
お互いの生活があるため、連絡をとるのはだいたい夜。メッセージを送りあったり、週に一度は電話をした。
最初は緊張したけどすぐに慣れた。遠距離だと赤くなった顔を見られることないし、目を合わせる必要もないから純粋に楽しかった。私にはこの付き合い方がとても合っていたらしく、彼との時間は私の癒しにもなっていた。
でも、そう思っていたのは私だけだった。