65リットルよりも、笑って。




「……せ、」


「ん…?どうした?」


「……し……、せ」



今日1日、ずっと何かを言っていたのだ。
今みたいなことをずっとずっと言っていた。


俺の目を見ながら、伝えつづけていた。


でもそれを汲み取ってやれないことがやるせない。

なにを言っているんだ、なにを俺に伝えようとしているんだよ。



「…ごめん……、なゆ…」



俺は、最悪だ。

今それを思い出すなんて、どこまでも情けないんだよ。


なゆが本当にやりたかったこと、興味あったこと、それは確かに最初に話していた。



『世界一周…はさすがに厳しいから、せめて日本一周とか?まあどれも現実的じゃないことばっか考えちゃって』



今から日本一周だなんて無理だ、できない。


笑えるだろ、なゆ。

エリートだの期待のルーキーだの言われてた男が、命を救いたい患者を前にして、好きな女を前にして、思い出作りのように動物園に行くことしかできないんだ。



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