65リットルよりも、笑って。
「…え、性格も変わっちゃうの」
イライラだけじゃなく、逆にぼんやりしたり。
今のままあっけらかんとした楽観的な性格じゃいられなくなるんだってさ。
これは看護師さんも大変だよ。
ただ私の場合はどうにも、意識障害が起きてしまえば自分がどうなっているかも分からず、ある意味で痛みや苦しさを感じることはないんだって。
つまり、自分が死んでいくことにも気づかないまま命を終えていくんだろう。
「……はは」
笑いしか出ない。
近いうち自分はこうなるんだと思うと、気が狂いそうにもなるのに落ち着いてもいる。
それはたぶん、私自身が夢とか目標とか、とくにない人生を生きてきたからだ。
人生に未練がない。
ああすればよかった、こうしたかった。
そんなものがない私は、どこかでホッとしていた。
「佐野さん、入ります」
コンコンと、ドアの外から聞こえる。
声だけで分かってしまって、スマホをしまってムスッと顔を尖らせてお出迎え。