65リットルよりも、笑って。
「うーん、味も微妙」
「文句言わず残さず食べてください」
「敬語うざい」
「…………」
こいつは私が夕食をちゃんと取り終えるまで見張っているつもりだ。
食べているところを見られるのがいちばん嫌いなんだよね。
なにもかもを諦めた私は、素朴な料理を口に運びながら、ふと沈黙を破る。
「高齢者に多いガンなんだってね、私の病気。こんな歳でなっちゃったよ」
「…多いというだけで、すべてがそうなわけじゃない。いつどんなとき、なにが起こるか分からないものが病気なんだ」
そりゃそうだ。
はっきり分かっていたら医者だってもっと楽チンだ。
患者だって心の準備ってやつが少しはできる。
こんな急に余命宣告されるような無理ゲーに嵌まることもない。
「ねえ、…先生」
初めて呼んでみると、憎らしい整った目がスッと合わせてきた。