65リットルよりも、笑って。




「……もう暗くなってるし」



空腹ではないから私は夕飯を食べたんだ。

それさえ忘れている自分は病気が進行してるのかどうなのかも、とくに今はどうだってよかった。


カーテンから覗いた空は、夜になっていた。



「お風呂入りたいし。今から入ってもいいかな…」



時刻としては20時半すぎ。

普通で考えれば20時半なんかみんな起きている時間ではあるけれど、病院の20時半に至っては別。


ひとつ下の階には大浴場がある。


私もそこに入っていいことになっていて、ただ看護師さんにぜったい知らせなくちゃだめ。



「………やだなー。だれにも会いたくないし、だれの顔も見たくない」



ちょっとくらいグレたっていいんじゃないの。

許してくれるよ、みんな許してくれる。
みんな優しくしてくれる。


だってそれは“余命患者”だから。


病室を抜け出して、たまに歩いてくるお医者さんたちの目をどうにか避けるように初めて使った非常階段。



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