65リットルよりも、笑って。
息子の足をさする母親と、仕事帰りにそのまま来たのだろうスーツ姿の父親。
病魔に苦しむ幼い我が子を前に、親であるにも関わらず、彼らは言葉を贈って身体をさすることしかできないのだ。
「オレ、つよい…?」
「…強すぎるよ。蓮夜はみんなを笑顔にして、みんなを助けてくれる……いっちばん強いヒーロー。ねえ、パパ」
「ああ。蓮夜はどんな敵にも負けないぞ」
両親の前でだけは、常に被っていた赤いニット帽を外していた。
赤い色はヒーローの証。
戦隊ヒーローのパジャマを身につけて、ベッド脇にも同じフィギュア。
ずっとずっと戦いつづけている、小さなヒーロー。
「オレね、みんなのぶんの痛いことをもらってるの」
「え…?」
「オレがね、みんなの悲しいをこうやって耐えれば……その代わりママやパパが笑顔になるんだって、夢でファイバーレッドが…言ってたの」
「……っ」
「だから怖くない!おくすりも、注射も、オレなんにも怖くないよ」