【シナリオ版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。

第十話



○京都・レンタル着物ショップの店内(昼)
 レンタル着物ショップで浴衣に着替えたジェシカのの等身アップ。

店員「よくお似合いです〜!」
ジェシカ「ありがとうございます」

ジェシカモノローグ「和仁さんと京都へ新婚旅行に来ました。二人きりの初めての旅行、既にすごく楽しい!」

ジェシカ「(浴衣で京都の街並を歩くの夢だったのよね♡)」

○店の外
 先に着替えが終わっていた和仁が待っている。浴衣姿の和仁等身アップ。
 通りすがる女性たちがチラチラと和仁を見ている。

和仁「終わったか」
ジェシカ「……っ」
ジェシカ「(顔が良い!!!!)」

 はわわ…と和仁に見惚れているジェシカのディフォルメ。

ジェシカ「(浴衣カッコ良すぎる…!!最高!!)」
和仁「…ジェシカ?」
ジェシカ「(ハッ!)」
ジェシカ「カッコいいです和仁さん!やっぱり和服似合うんですね!!」
和仁「そうか?ジェシカもよく似合ってる」※優しい笑顔
ジェシカ「……っ!!」※キューンと撃ち抜かれた表情
ジェシカ「(これ心臓もつのかしら??)」※ドキドキ
和仁「行こう」

 右手を差し出す和仁。

ジェシカ「! …はい」

 二人の握られた手のアップ。


○清水寺
 本堂をバックに写真を撮る二人。

○八坂神社
 二人で両手を合わせてお参りをしている。
 おみくじを見つけて「こっち、こっち!」と手招きしているジェシカ。
 おみくじを引いてみた二人。
 大吉を引いて喜ぶジェシカ。
 大凶を引いて思わず固まる和仁。逆に瞳をキラキラさせて大凶を見つめるジェシカと、そんなジェシカを見て呆れ気味の和仁の背中。
 二人のおみくじを重ね合わせて結ぶジェシカ(ニコニコ)。
楽しそうなジェシカを見て顔を綻ばせる和仁。

※台詞なしのデートの様子


○八坂神社を出た道
 ルンルンとご機嫌なジェシカ。

和仁「楽しそうだな」
ジェシカ「楽しいですよ!京都に来るの学生の時以来でずっと来たかったんです!」
和仁「そうか」
ジェシカ「それにずっと和仁さんと一緒にいられて嬉しいです」

 パアッと華やぐジェシカの笑顔のアップ。エフェクトでキラキラな感じ。

和仁「……」※顔を背ける
ジェシカ「和仁さん?」
和仁「…煽らないでくれ」※若干頬が赤い
ジェシカ「?」※きょとん


○老舗京料理店
 風情のある庭が見える個室。畳の上にテーブルと椅子。
 京料理を美味しそうに食べるジェシカ。

ジェシカ「美味しい!」
和仁「よかった」
ジェシカ「京料理って一度食べてみたかったんです!それもこんなに素敵な個室なんて贅沢ですね」
和仁「京都で会合がある時によく使う店なんだ」
ジェシカ「そうなんですか…」
ジェシカ「(会合ってドラマで見たことあるけど、あんな感じなのかなぁ)」

 任侠ドラマで顔のイカつい男たちが煙草吹かしながら酒を組み合わすシーンを思い出しているジェシカのディフォルメ。

女将「失礼します。和仁様、ようお越しくださいました」

 着物姿の上品な女将が挨拶にやって来る。

和仁「女将、お邪魔している」
女将「まあまあ、こちら奥様ですか?」
ジェシカ「は、はいっ!」
女将「お綺麗な奥様ですこと。ゆっくりしていってくださいね」


○店を出る
ジェシカ「(あの後女将さん以外にも板前さんとか挨拶に来てくれたけど、和仁さんってすごいんだなぁ…)」

 色んな人が二人に挨拶しに来た回想。

ジェシカ「(そもそもこのお店、高いわよね…?決まったお料理が出てきて値段わからなかったけど、いいのかしら…)」

 和仁が会計をしている最中のため、店の前で待っているジェシカ。その奥で目の前の道路をトラックが走っている。
ジェシカの目の前を小学校低学年の男の子が飛び出す。

ジェシカ「え……」

 男の子はサッカーボールを拾おうとして道路に飛び出した。
 走っていたトラックが男の子に迫る。

ジェシカ「危ないっ!!」

 咄嗟に男の子に駆け寄ったジェシカ。
 キキィーーッ!という急ブレーキの音。
 店から出てきた和仁。

和仁「ジェシカ…?」

 道路で倒れている男の子と、その子を庇うようにしてうずくまって倒れているジェシカ。
 倒れている二人の直前でトラックが停車している。

和仁「ジェシカ!!」

 血相を変えてジェシカに駆け寄る和仁。

和仁「ジェシカ!!ジェシカ、しっかりしろ!!」

 ジェシカを抱き起こす和仁。
 男の子は怪我なく無事で、近くにいた両親がすぐに駆け寄る。

和仁「ジェシカ!!」
ジェシカ「ん…っ」
和仁「ジェシカ!大丈夫か!?」
ジェシカ「はい…ちょっとすりむいただけです」

 男の子の無事な姿を見てホッと胸を撫で下ろす。

ジェシカ「よかった、無事で…!」
和仁「ジェシカ……!!」

 ジェシカをぎゅうっと強く抱きしめる和仁は微かに震えている。

ジェシカ「和仁さん、大丈夫ですよ…?」
和仁「……」
ジェシカ「和仁さん…」


○旅館の部屋(夜)
 高級旅館の一番高い部屋。かなり広々としており、露天風呂も付いている。
 旅館の浴衣に着替えている二人。
 ジェシカは腕をすりむいた程度のかすり傷で、絆創膏を貼っている。
 和仁はさっきからずっと押し黙っている。

ジェシカ「和仁さん、お茶飲みます…?」
和仁「……」
ジェシカ「…ごめんなさい」

 そっと和仁の手を取るジェシカ。

ジェシカ「心配かけましたよね…」
ジェシカ「(ダメだな、私…あんなことがあった後なのにまた和仁さんに心配かけるなんて)」
和仁「…情けないだろう?」

 ジェシカの手を握り返す。

和仁「桜花組次期組長が、ここまで取り乱すなんて」
ジェシカ「いえ!それだけ私のこと心配してくれてるんでしょう?」
和仁「…怖かった」

 ジェシカに寄りかかって頭を寄せる和仁。

ジェシカ「和仁さん……正直なことを言って、今めちゃくちゃ興奮してます」
和仁「…………は?」

 思わず顔を上げてポカンとする和仁。

ジェシカ「だって、いつもクールな和仁さんが弱音を吐くなんて…!ときめかずにいられないですよ…!!」※悶えてる
和仁「……」

 思わず噴き出して笑い出す和仁。

和仁「ふっ、はははっ!」
ジェシカ「!!」
和仁「本当に君は…すごいな」
ジェシカ「? すごいですか?」
和仁「ああ、すごい」

 コンコンとドアがノックされ、外から声がする。

仲居「失礼します。お食事の用意ができました」


○夕食
 部屋に豪華な夕食が並べられる。

ジェシカ「今日だけで贅沢ばかりさせてもらって、ありがとうございます」
和仁「せっかくの旅行だからな」
ジェシカ「ねぇ、和仁さん。実はずっと気になってたことがあるんです」
和仁「なんだ?」
ジェシカ「和仁さんは刺青しないんですね」
和仁「え?ああ、してないな」
ジェシカ「初めて会った時、どこかに刺青入れてるのかな?ってワクワクしてたんですけど」
和仁「…ワクワクすることか?」
ジェシカ「入れてなかったから極道の方が刺青入れるのはフィクションなんだ、って思ってたんです。でも舎弟の方は結構刺青してる方多いですよね」

 腕に刺青のある千原と背中に刺青のある笹部のディフォルメ。

和仁「入れた方がよかったか?」
ジェシカ「いえ!たくましいカラダがよく見えるのでOKです!!」※キラキラ
和仁「…そうか」←ツッコむのをやめた
ジェシカ「和仁さんならあってもなくてもカッコいいから好きです!」
和仁「そう言うのは君くらいだ。普通は刺青なんて怖がるだろうに」
ジェシカ「そうですかね?アメリカなら普通ですよ」
和仁「そうか、なるほど。俺がしてないのは反抗心みたいなものだな」
ジェシカ「反抗心?」
和仁「組なんか継ぎたくないというな」
ジェシカ「えっ、そうなんですか!?」
ジェシカ「(意外!)」
和仁「極道の家になんて生まれたくなかったと何度も思っていたよ」
ジェシカ「そうだったんですか…」

 和仁、一旦箸を置く。

和仁「ジェシカ、前にも言ったが君に聞いて欲しい話がある」
ジェシカ「!」
和仁「俺の過去の話だ。さっきあれだけ取り乱したのも過去が関係している。聞いてくれるか?」

 ジェシカも箸を置き、真面目な表情で真っ直ぐ和仁を見つめる。

ジェシカ「聞かせてください」
和仁「ありがとう」


○ここから和仁の過去回想
和仁モノローグ「桜花組組長の一人息子として生まれた俺は、幼い頃から次期組長となるために厳しく躾けられてきた」

 和仁十二歳。強面の男たちに囲まれている。

和仁モノローグ「拒否権なんてなかった。たった一人の跡取りである俺が桜花組を継がない選択肢などない。父の敷いたレールの上を進むしかなかった。生まれた時から裏世界で生きることを義務付けられていたんだ」

 次期組長として厳しくしごかれているシーン。
 影の中で生きるしかない幼き和仁の背中。


○現在から五年前・吉野家
組員「若!どこですか?若ー!」

 和仁を探し回る組員たちの目をすり抜け、裏口から抜け出す和仁二十歳。

和仁「(ったく、勘弁してくれ…高校卒業した途端、組の仕事をどんどんやらせやがって)」
和仁「(たまには一人にさせろよ)」
???「あの!そこの人〜!!」
和仁「え?」

 振り返るも誰もいない。キョロキョロ周りを見回すが、やっぱり誰もいない。

和仁「(やっぱり気のせいか?)」
???「上だよ!上ー!」
和仁「は?」

 上を見上げる和仁。
 黒いセーラー服を着た黒髪セミロングの少女が木の上に登っている。少女は腕に猫を抱えている。

???「そう!あなただよ!」

 和仁に向かって笑顔で手を振る少女。
 訝しげに少女を見上げる和仁。

和仁モノローグ「これが俺と美桜(みお)との出会いだった――」



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