【シナリオ版】不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
第十二話
○拷問部屋(深夜)
美桜と電話している和仁。
和仁「俺と一緒に来てくれないか」
美桜『和くん、でも…』
和仁「頼む、美桜。俺は美桜と一緒にいたい」
電話している美桜のカット。自分の部屋にいる。
和仁「美桜と一緒にいられるなら、組なんか捨ててやる」
美桜『そんなのダメだよ!』
和仁「俺は組より美桜が大事だ」
美桜『っ、和くん……』
涙を溜める美桜。その後の決意した表情。
美桜『わかった。私も和くんと一緒にいたい』
和仁「明日、いつもの桜の木の下で落ち合おう」
美桜『うん…!』
和仁モノローグ「俺は美桜と駆け落ちする約束をした」
拷問部屋から抜け出す和仁。
和仁モノローグ「早朝になるのを待って拷問部屋から抜け出した」
気づかれないように待ち合わせ場所まで走る和仁。
○桜の木の下(早朝)
和仁モノローグ「美桜と初めて出会った桜の木の下で、美桜を待った。
俺はほとんど何も持っていなかった。かろうじてスマホと財布だけで、他は何もいらなかった。
あとは美桜さえいてくれたらよかった」
桜の木の下で美桜を待つ和仁。
和仁モノローグ「だけど、いくら待っても美桜は来なかった」
和仁「美桜…来てくれないのか…」
雨が降り出す。びしょ濡れになりながら、それでも美桜を待ち続ける。
峰「若!!」
傘を差した峰が息を切らして走ってきた。
和仁「峰…?」
峰「大変だ!!さっきこの近くで事故があって…!」
和仁「え……」
峰「染井の娘がトラックに撥ねられた!!」
衝撃を受ける和仁のアップ。
和仁「(染井の娘って、まさか……)」
和仁「美桜じゃないよな!?」
峰の両肩をガシッと掴んで揺らす。峰が持っていた傘が落ちる。
和仁「美桜は!?美桜は無事なのか!?」
峰「……」
目を逸らし、肩を落とす峰。
和仁「……っ!!」
土砂降りの中で呆然とする和仁のアップ。
○病院
峰とともに病院へ向かう。ある病室の中で美桜の家族の泣き叫ぶ声が聞こえる。
「美桜!!目を覚ましてぇっ!!」
「美桜ーーっ!!」
びしょ濡れのまま病室の前で立ち尽くす和仁。その隣で峰がやるせない顔を浮かべている。
和仁「……」
グッと拳を握りしめるアップ。
病室からは啜り泣く声が聞こえる。
???「あんたのせいね…」
不意に病室から出てきた黒髪ポニーテールの美桜に似た美女。和仁の方を真っ直ぐ睨みつけている。
●染井美咲
美桜の姉。黒髪ポニーテールの美女。年齢は和仁と同じ。
美咲「あんたのせいで、美桜は死んだのね……」
ゆらりと和仁に近づく。美咲の瞳は正気を失っている。
和仁は何も言えず、美咲を見つめている。
美咲「あんたが美桜を殺したのよ!!この人殺し!!」
和仁に詰め寄ろうとする美咲を義徳が止める。
義徳「美咲お嬢さん!!」
美咲「人殺し!!私の妹を返してよっ!!」
美咲、義徳に止められながらも泣き叫ぶ。
義徳、美咲を止めながら憎しみを込めて和仁を睨み付けている。
峰に促され、逃げるようにその場を立ち去る和仁。
和仁「(美桜は死んだ?俺のせいで?)」
○美桜の回想
美桜「和くん!」
美桜「和くん、怪我良くなった?無茶したらダメだよ」
○病院の外・土砂降りの中
人目も憚らず、叫ぶ和仁。どうしようもない絶望感。
和仁「うわああああああああああああ」
○美桜の葬式(昼)
穏やかに微笑む美桜の遺影。
参列している組員たち、美桜の友人たちは皆悲しみ涙を流している。
葬儀が執り行われる中、中に入れずスマホの画面を眺めている和仁。その画面には美桜と二人で撮った写真が写っている。
和仁「(俺があんなことを言わなければ、美桜は死なずに済んだ。せめて迎えに行けばよかった。俺のせいで……)」
ポタリとスマホの画面に雫が落ちる。
和仁「うっ、美桜……っ」
しゃがみ込んで一人涙を流し続ける和仁。
○回想終了・現代・旅館の部屋(夜)
キングサイズのベッドの上で並んで座っている和仁とジェシカ。
和仁「……これが五年前の出来事だ」
ジェシカ「そんな……」
衝撃的な話に言葉が出ず、震えているジェシカ。
和仁「俺はその後、家を出た。一人になりたかったが峰がついて来てくれて…その後千原や笹部たちと出会った。
他にも行き場がなくて腐ってた奴らを集めて、新たな組を作ったんだ」
ジェシカ「そうなんですか?」
和仁「生まれた時から極道の世界にいた俺は、結局裏世界で生きる方法しか知らなかった。いつの間にか組は大きくなっていて、一年で元の桜花や染井に迫る勢いを付けた。
流石に野放しにできないと思った親父が俺を連れ戻し、組ごと桜花組に吸収したんだ」
ジェシカ「そうだったんですか…」
和仁「あの時思い知った。どんなに足掻いても結局俺はこっち側の人間で、誰かを傷つけないと生きていけないんだと。だから美桜は…」
ジェシカ「違います!」
ジェシカ、和仁を遮って大声をあげる。震えながら涙を浮かべる。
ジェシカ「和仁さんのせいじゃない!」
和仁「でも俺があんなことを言わなければ、美桜は死なずに済んだかもしれないんだ」
ジェシカ「和仁さんが辛かったのはわかります。自分を責める気持ちもわかります。私もそうだったから…」
ジェシカ、堪え切れず涙を流す。
ジェシカ「母が亡くなった時、もっと自分にできることはなかったのかなって。私のために必死で働いていた母のこと、もっと支えられなかったのかなって、自分のこと責めてばかりいました。でもきっと、マムはそんなこと望んでないから…せめて前向きに笑って生きようって思ったんです」
和仁「ジェシカ…」
ジェシカ「実は、書斎を整理していた時に美桜さんとの写真を見てしまいました。その写真の美桜さん、とても幸せそうに笑ってました」
和仁「……」
ジェシカ「きっと幸せだったんですよ。和仁さんと一緒にいられて」※泣きながら笑顔
和仁「そう、だったのかな…」
和仁の頬に一筋の涙が伝う。
それを見たジェシカ、ぎゅうっと和仁を抱きしめる。
ジェシカ「きっとそうです…!」
和仁「……っ」
ジェシカを抱きしめ返す和仁。
ジェシカ「美桜さんとは会ったことはないけれど、きっと幸せだったはずですよ。
だって私は今、あなたといられてとても幸せだから」
和仁「君のそういうところに惹かれたんだ」
ジェシカを離して真っ直ぐ目を見つめる和仁。
ジェシカ「え?」
和仁「決して他人のせいにはせず、辛いことがあってもひたむきに生きていて、強くて優しい君が好きだ」
ジェシカを真っ直ぐ見つめて彼女の頬に触れる。
和仁「もう二度と誰も愛せない、また大切な人を失うかもしれないのなら誰も愛したくないと思っていたのに…君を愛さずにはいられなかった」
ジェシカ「和仁さん…」
和仁「今愛しているのはジェシカだけだ。これから先もずっと、君だけを愛してる」
頬に触れる和仁の手を握りしめる。
ジェシカ「私も愛しています」
和仁の首に腕を回して抱きつくジェシカ。
きつく抱きしめ合う二人。
ジェシカモノローグ「大切な人を失った私たちは心のどこかが欠けていた。
でもその欠けた部分を補い合うように、何度も抱き合って溶け合って一つになった――」
ベッドで抱き合い、何度もキスするシーン。
○ベッドの中(朝)
寄り添い合って朝を迎える。先に起きたジェシカ、じいっと和仁の寝顔を見つめる。
和仁の寝顔アップ(めっちゃ綺麗)。
ジェシカ「(和仁さんの寝顔素敵…♡)」※うっとり
寝ている和仁にキスするジェシカ。
ジェシカ「(…好き♡)」
和仁「いい朝だな」
ジェシカ「!? 起きてたんですか?」
和仁「今起きた」
ぎゅうっとジェシカを抱き寄せる和仁。そのまま何度もキスしてイチャイチャタイム。
和仁「…ジェシカ、東京に戻ったら君のお母さんに会わせてくれないか?」
ジェシカ「え?」
和仁「ちゃんと挨拶がしたい」
ジェシカ「嬉しいです…!母もきっと喜ぶと思います」
和仁「…父の言いなりになって良いことはないと思っていたが、君と結婚できたことだけは最上だった」
ちゅ、とジェシカの額にキスを落とす。
和仁「ありがとう。俺の妻になってくれて」
ジェシカ「私の方こそ妻にしてくれてありがとうございます」
優しく微笑む和仁、ぎゅうっとジェシカを抱きしめる。
和仁「これからもよろしく、奥さん」